はしがき 

現在、建設省においても、各種事業における対話型の設計・計画プロセスの必要性が認識されてきております。このためには、計画された内容が実現した場合に、どのような空間ができるのかについて、認識を共有することが有効であります。

本建築研究資料は、平成9年度に出版したNo.92「建設省版・景観シミュレータ・操作自習の手引(Ver.2.03 CD-ROM付)」が絶版となったため、その後各地のユーザーから寄せられた意見や報告に基づき改良を重ねた成果、及び、建築研究所特別研究「成熟社会に向けての都市解析データの整備と都市評価プログラムの開発」の中で作成した、上記景観シミュレータと組み合せて用いることのできる「成熟都市シミュレータ」と二つの官民共同研究の成果を収録し、これに具体的な市街地再開発・土地区画整理などの事業への応用に即した、実務マニュアルを付したものです。

これにより、現場事務所などにおける検討の中で、修正意見や提案を直ちに反映させた編集操作や、更地状態の換地計画案の上に次第に将来の市街地が生成していく過程の予測などを表示し、視覚的に確認することができます。

従来の版は、既に建設省各地方建設局に配布されている他、都市基盤整備公団や自治体が行う都市開発事業にも応用され、また神奈川県庁では職員を対象とした景観シミュレーション研修コースの教材にも採用され、積極的な研修生の応募を得ています。

これらフリーウェアは、本出版と平行して、建築研究所のホームページから、ソースコードも含め無償公開しております。これはある種の公共財産であって、ソフト部門における様々の応用開発を可能にするインフラを提供するもの、と理解することもできます。その目的とする所は、民間商品ソフトと競合するものではなく、共用できるデータ形式や基本的な処理ライブラリの土台を提供するものです。

栄枯盛衰の激しい商品ソフトのような一時の流行に終わることなく、更に磨き込むことにより、信頼性・安定性を高め、シンプルだが枯れた道具として、地道に根付くことを期待しております。

平成12年7月建設省建築研究所長 山内 泰之