IV.景観シミュレータ2.05基礎機能編 1. 景観シミュレータを用いて、どのようなことができるか? 景観シミュレータは、土木建築施設の建設や、各種都市開発事業に先だって、計画内容を視覚的に検討する手段を提供することにより、景観に配慮したより良い計画内容を達成するための設計計画業務をローコストで実現すると共に、検討過程の中に専門家だけでなく、地権者や入居予定者、更には周辺地域住民などに計画内容を公開し、計画プロセスへの参加を促進するような媒体としての活用も期待されるところです。 このような目的を達成するためには、通常のコンピュータ・グラフィックスのソフトウェアが有している、基本的な機能に加えて、景観検討業務を楽にする機能を実現しています。 (1)モデリング機能 ・土木建築施設、都市を構成する様々の構成要素の3次元形状を作成する。 ・地形の3次元形状を作成する。 ・作成した3次元形状を有する部品を、検討地区の中に配置する。 ・既に配置された様々の構成要素を、削除・移動・コピー・変形・編集する。 ・各種構成要素の色彩、仕上材料、テクスチャを編集する。 (2)データベース機能 ・優良景観事例(過去の開発事例【NEW】) 景観シミュレータを用いて検討を行った現場に関しては、3次元形状も追加登録しました。 ・景観構成要素(基本的な土木建築施設の構成要素) 一般的な構成要素は、その都度作成せずとも、データベースから検索し、直ちに配置することができます。また、追加登録することもできます。【NEW】沖縄の事物を追加しました。 ・景観材料(商品として販売されている景観に配慮した各種部品・部材) メーカー等がデータを用意した場合には、データベースに登録することにより、それらを利用した場合の効果を検討することができるようになります。 これらのデータは、ユーザが登録して増補することができます。分類体系も用意してあります。 (3)シーン編集機能 ・背景写真(現況)との合成 写真の視点位置を復元(標定)することにより、正確な位置合わせを行うことができます。 ・光源の設定 緯度経度・月日・時刻を指定することにより、太陽の方位を自動的に計算します。 ・様々の視点位置の設定・登録機能 液晶プロジェクタなどを活用して、地元説明会を開催する際に、非常に有効であることがこれまでの経験でわかっています。 (4)レンダリング機能 ・テクスチャ表示(表示に最も時間はかかるが、現実感が高い) ・シェーディング表示(計画対象物のヴォリュームを見るのに便利) ・ワイヤーフレーム表示(表示が速いので、編集段階で便利。また、隠れている部分もわかる) (5)都市計画機能 ・地割と各種都市計画条件から、市街地の形状を自動生成する。 このような機能を活用して、以下のような業務に活用することを想定しています。 a.歩道の舗装を検討する b.橋を架ける c.橋を塗り替える d.護岸工事 e.新しい道路や川を作る f.法面形状を予測する g.法面の仕上げを検討する h.建築物が町並みに及ぼす影響を見る i.都市計画条件の検討・再検討 j.土地区画整理事業を行う k.市街地を再開発する j.団地を建替える k.町並を保存する ? これ以外にも、ローコストの3次元グラフィックス・ソフトとして、様々の用途が考えられるでしょう。 例: ・再開発などにより消滅する市街地を3次元的に記録する。 ・市街地の歴史的発展過程を記録し表示する ・素人が自宅を設計する ・研究段階にある未来都市空間を、視覚的に表示する ・各種建材の宣伝・広告の媒体とする ・道案内に用いる(3次元の現況地形+市街地データの上に、集合場所を表示したデータを、関係者に配布したことがあります) 2. 動作環境 (1)Unix版とパソコン版(DOS/V,98) 景観シミュレータは、マルチ・プラットフォームの考えに基づき、パソコンとUnixマシンの上で平行して開発されました。 Unix版は、基本的にX-Window系のGUIと、OpenGLが利用できる環境に移植可能ですが、現在は、主にシリコングラフィックス社製のIRISシリーズ(OSとしてUnix系のIRIX5.3以上を搭載)の上で使用されています。具体的には、Indy、Indigo2、Onyxといった機種で実際に動作確認しています。 パソコン版は、マイクロソフトのWin32によるGUI、やはりOpenGLが利用できる環境に移植可能です。実際にはWindowsNT3.51以上の環境を主なターゲットとして開発を進め、平成9年に入ってから、要望の多いWindows95に移植した場合に生じる障害に対処、2月末までに主要な問題を解決しました。 現在の段階では、パソコンの価格性能比がここ数年急速に向上したことから、性能的にもNTマシンの方がやや優勢です。高速グラフィック・ボードを搭載したパソコンは、ワークステーションを凌ぐ処理速度を実現しています。 WindowsNTとOpenGLの利用できる環境としては、この他にAlpha,Mips,PowerPC等のCPUをベースとしたパソコンもあります。但し、Intel系の実行形式(*.exe)をそのままインストールしても、エミュレーションにより動作するため、速度の面でCPUの性能を生かすことはできません。同じソース・コードを、これら各CPU専用のコンパイラで処理することにより、これらの性能を引き出すプログラムができますが、現在はまだ需要が大きくないために用意していません。バグが殆ど解決してから、要望に応じてリリースする計画です。 ここでは、主にパソコン版について説明します。 (2)必要なコンピュータの環境条件 a.OS(オペレーティング・システム) ? CPUにIntel486以上を用い、WindowsNT ?3.51/4.0または、Windows95/98/2000をOSとして搭載したパソコン b.ハードディスクの空き 配布中のCD−ROMをフルにインストールするためには、最低300MBの空きが必要です。容量の大半は、景観データベースのサンプルです。これらを用いることにより、容易に景観設計検討を進めることができます。ソフトを試すためには、最小限のデータで済ますことも可能です。殆どのデータを自作するユーザに向いています。建築分野のユーザであれば、土木施設の事例を説明するイメージデータは必要でないかも知れません。 c.メモリ WindowsNTおよびWindows95では、仮想記憶機能により、少ないメモリでも基本的には実行可能ですが、速度に大きく影響します。景観シミュレータで簡単な写真合成などの処理を行うだけであれば、通常のワープロ等を使用するメモリ要求条件と大差ありません。地形データや、本格的な土木建築施設の3次元データを扱うためには、最低32MB以上に拡張したいところです。 d.CPU速度 WindowsNT/95が動作すれば、CPUが486マシンでも、写真合成等の簡単な操作は十分実行可能です。そこから先は、扱うデータの規模との関係、あるいはユーザーがどれだけのスピードを求めるか、という利用目的と関係します。例えば業務として関係者を集めての評価セッション等を行うためには、PentiumPRO、PentiumII等のマシンを用意する必要があるかも知れません。 表示処理速度は、CPUとグラフィック・ボードの関係で決定します。グラフィックス・ボードがOpenGLの機能をハードで支援している場合には、表示処理速度は格段に上昇します。その場合、CPUは、表示処理の間は、それが終了するのを待っているだけなので、CPUを速いものにしても全体のスループットはあまり向上しません。 景観シミュレータは、マルチ・スレッドの処理を行っていないので、これまでテストした結果では、マルチCPUのマシンでも速度は基本的に同じです。但し、ファイルをロードする時間は、CPUの速度により大きく変わります。 これに対して、グラフィック・ボードがOpenGLをハード的に実施しない場合(仕様で「サポートする」と書かれていても、デプスバッファの解像度等の制約条件があって実際にはその機能が利用できない場合もある)には、OpenGLの機能をソフトウェアで代行します。この場合には、CPU速度が表示処理速度を決定することになります。 e.グラフィック・ボード グラフィックス・ボードのOpenGL対応、未対応に関わらず、景観シミュレータは立ち上がりますが、実用面からは、以下の条件が満足されている必要があります。 ・画面サイズ:最低ヨコ800×タテ600。特に縦がこれよりも小さいと、ウィンドウがはみ出してしまい、様々の処理を指示するボタンが操作できなくなります。 ・色数:32000色以上が現実的です。256色以下では、形状を確認できるのみです。 ・3次元グラフィック処理:なくとも動作可能ですが、OpenGL対応グラフィックス・ボードが装備されていると、格段に速くなります。但し、ボードにより、この機能を利用するためには、画像のサイズを小さくしなければならなかったり、またデプス・バッファを16ビットにしなければならないものがあります。景観シミュレータでは、デプス・バッファを24ビット以上としないと、市街地等を表示した場合に建物の縁が鋸状になったりする現象が現れます。 現在、多くのOpenGL対応グラフィックス・ボードが発売されています。 3. インストール (1) 景観シミュレーション・システムの導入 1.インストールの内容 インストールは、(1)景観シミュレータの動作に必要なディレクトリ構成と実行形式を含むファイルを各システムの中に構築すること、(2)景観シミュレータにシステムの構成・動作環境を教える kdbms.set というコントロール・ファイルを、ユーザの動作環境に合わせて一部修正すること、(3)kdbms.set の在り処を、KSIM_ENV という環境変数に設定し、各プログラムが認識できるようにすること、から成り立っています。 WindowsNTでは、この全ての処理を、setup.exeというインストーラが自動的に実行します。Windows95では現在、(3)をユーザーがautoexec.bat を各自の責任で書き換えることにより、実現するようになっています。 CD−ROMからインストールする場合、インストーラは、CD−ROM中の圧縮されたデータを解凍しながらサンプル・データを含めて250MB程度をインストールします。しかし、この領域の80%以上は、サンプル・データです。従って、小さな空き容量しかないシステムで、一時的に景観シミュレータのテストを行いたい場合のために、COMPACT版を用意してあります。この版では、約77MB程度のディスク空き容量を必要とします。 ネットワークからインストールする場合、平成9年5月時点では、配布中のCD−ROMと同一の内容がダウンロードできるようになっています。ユーザーのハードディスクの中に適当な(一時的)ディレクトリを作成し、この中に、 ftp://www.kenken.go.jp/keikan/CD/setup/compact/ 以下のファイル群をダウンロードし、setup.exe を実行することにより、CD−ROMからインストールしたのと同様のインストールが行われます。ネットワークからのインストールのためには、現在の道路事情ではfullsetは現実的ではないと思われます(一応用意してあります)。面倒でも、compact をまずインストールし、必要に応じて、必要なデータ(これも次第に拡充される予定)をインストールすることが現実的と思われます。ネットワークの運用状況・ユーザーの意見に基づいて、ダウンロードの環境は今後改善していく予定です。ユーザーが必要とするデータの分野によっても、必要な範囲は異なるでしょう。 AインAインストールの実際 インストーラは、WindowsNT用に作成されています。CD−ROMの \INSTALL\SETUP.EXEを実行することにより、インストーラが立ち上がります。 95にインストールする場合、Autoexec.batをユーザーが書き換える必要があります。具体的には、Autoexec.batに、 SET KSIM_ENV=■■■\KSIM\BIN\KDBMS.SET という一行を加えます。■■■の部分は、ユーザーが景観シミュレータをインストールした場所で、例えばB:¥KEIKANというディレクトリにインストールした場合には、 SET KSIM_ENV=B:\KEIKAN\KSIM\BIN\KDBMS.SET となります。 OpenGLがバンドルされる以前の初期のWindows95にインストールした場合、景観シミュレータを起動すると、次のようなエラー・メッセージが現れます。 「プログラム開始エラー:必要なDLLファイルOPENGL32.DLLが見つかりませんでした。」 このような場合、CD−ROMの\keikan\95ディレクトリから、OpenGL32.dllおよびGLU32.dllを、[keikan]\ksim\binまたはWindows95\systemにコピーする必要があります。 なお、この際にエクスプローラの[表示][オプション]で、「すべてのファイルを表示」という設定になっていないと、dll(ダイナミック・リンク・ライブラリ)ファイルが表示されないので、注意して下さい。 WindowsNTと、Windows95の両方を立ち上げ可能になっているデュアル・ブート・システムでは、競合しないように、後者のディレクトリにコピーする必要があります。NT用のOpenGLと、95用のOpenGLは異なっており、混用するとシステムが動きません。 最初からOpenGLが入った新しい版のWindows95を用いている場合、あるいは既にCADソフト等の導入に伴って上記の二つのdllがインストールされている場合には、最初からインストールされているものに上書きしないように注意する必要があります。試験的に景観シミュレータを起動してみてからコピーして下さい。 これ以外のコンポーネントとして、都市開発シミュレーション、およびデータ・コンバータがあります。CD−ROMの\KEIKAN\都市開発 および \KEIKAN\貿易ディレクトリを、先にインストーラによって作成した[KEIKAN]ディレクトリにコピーする(即ちKSIM,KDB等と横並び)のが便利です。これらの周辺コンポーネントのインストールは、マニュアルで行うようになっているので、ショートカットの作成、アイコンの登録等は、それぞれのシステムで行って下さい。
(2) 成熟都市シミュレータとの連携 成熟都市シミュレータを利用し、景観シミュレータにシミュレーションの中間結果を逐次表示するように連携させることができます。この場合、同一のコンピュータ上でも動作は可能であるが、別のコンピュータにインストールし、ネットワーク越しにデータを授受する方が、処理速度は上がります。 成熟都市シミュレータ maju.exe がインストールされているディレクトリに、Timerpath.txtというコントロールファイルがあります。また、景観シミュレータ sim.exe がインストールされているディレクトリにも、同名のコントロールファイルがあります。最も簡単な使い方としては、二つのコンピュータでネットワーク越しに共有できるディレクトリを作成し、そのディレクトリにドライブ文字を割り付けます(ドライブ文字は二つのコンピュータでは違っていても良い)。そして、それぞれのコンピュータから見た、この共有のディレクトリのドライブ文字を用い、例えば、景観シミュレータから見たこの共有ディレクトリのドライブ文字が「f:」であれば、sim.exe と同じディレクトリにあるTimerpath.txt に f:\maju.flg f:\maju.dat のように2行にわたって、二つのファイル名を書きます。また同時に、maju.exe と同じディレクトリにあるTimerpath.txtに、そちらから見たこの共有ディレクトリのドライブ文字が例えば m:であれば、 m:\maju.flg m:\maju.dat のような2行を記入します。これは、転送しようとするデータを格納したファイル(dat)と、データ授受の状態を示すフラグ情報を格納したファイル(flg)の名前を示しています。 成熟都市シミュレータから、複数のコンピュータに対してデータを授受しようとする場合には、maju.exeが置かれているディレクトリのTimerpath.exe に、複数のデータ交換用のファイル名を、例えば次のように指定します。 f:\maju.flg f:\maju.dat f:\maju1.flg f:\maju1.dat g:\maju.flg g:\maju.dat …… 一方、表示を担当する景観シミュレータが置かれたそれぞれのコンピュータの側では、sim.exeと同じディレクトリにあるTimerpath.exe を、上記の対応するフラグ・ファイルとデータ・ファイルを指すようにします(従ってこちらの側は2行で構成される)。 (3) サンプル・データ等 景観シミュレータのサンプル・データは、形状を記録したLSS-Gファイル(*.geo)、情景を記述したLSS-Sファイル(*.scn)、背景やテクスチャを示すイメージデータ(*.sgi)等から構成されています。従来は、ファイルの種類毎に、それぞれのディレクトリに格納するようになっていました。しかし、大量のデータを扱う実務での利用、およびデータベース格納時におけるファイル名の衝突等を考慮し、Ver.2.05では、プロジェクト単位で一つのディレクトリに一括してデータを格納する方法も可能としました(景観シミュレータの作業環境設定機能で対応します)。従って、サンプル・データについては、CD-ROM及びホームページでは、案件毎にディレクトリにまとめて配布しています。これを閲覧する場合には、同じように、案件毎のディレクトリのままでコピーすれば、利用可能です。景観シミュレータを実際に導入した現場で作成されたデータについては、優良景観事例データベースにも追加登録してあります。 |
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